| 前回のレポートのおさらいから始めよう。 隣地境界線の考え方において、過去の建設省の質疑応答集を再読すると、不整形の敷地形状に限り、内接した合理的な範囲で多角形に区分した多角の各辺毎に、後退距離を定める事も可能としている。少なくとも不整形な境界を直線化するモデル化も可としている。あくまで合理的な範囲内という条件付きだ。
そうすると、隣地境界線は、前面道路以外の連続した敷地境界の連続した線分で表現される事になる。下図をご覧頂きたい。
上記で示す様に一の隣地境界線の定義がよりシンプルに考えられる。前面道路以外の連続した敷地境界を隣地境界線と考える。
建築物からの後退距離は、「隣地境界線からの後退距離(同号に規定する水平距離のうち最小のものに相当する距離)とある事より後退距離も一と考える。
では、これより今回の事例を一の隣地境界線とし検証してみよう。念の為前回も紹介したが寄棟状に作成した全ての境界から隣地斜線に適合する形状だ。外壁後退距離はBの位置が最小となる為その値で作成されている。(下図)
まず、いきなり結果をご覧頂く。
結果の傾向を従来の隣地境界点間を隣地境界線とする結果と比較してみよう。
Aの境界点間においては、従来の解析法でOKだった結果が、隣地境界線が一の場合は、NGとなる。B,Cにおいては、同じ算定位置が同様にNGとなっている。
結論から、この事例において隣地境界線を一と定義した手法の方が厳しい結果となる。本日は、この事の検証からはじめよう。 Aの境界点間を検証する。
1)従来方式においては、天空率比較されなかった区分が比較される事により計画建築物の天空が低くなる。 2)一の隣地境界において外壁後退距離も一となる為に最もせまいB の外壁後退距離が適用される為に適合建築物の高さが低くなり天空率が計画建築物に比較し大きくなる。 従来方式の場合は下部の円弧部分の建築物の天空率がまったく考慮されていなかった為、敷地内のすべての領域が比較された場合にNGとなる。
天空図を比較してみよう 一の場合は
従来方式の場合は
従来方式の場合、上下で比較していただくと明白だが敷地境界点に垂直な範囲以外は、無視して良い為、天空図の右下部にあたかも空地がある様に評価されてしまう。
B側隣地の前面を検証する。よくいわれる事に「算定位置の視界に適合建築物の側面が見えると空が大きく遮蔽される為、適合建築物の天空率が低下する為に危険側である。だから境界に垂直に切断した領域を適合建築物とする。」しかし、上記の天空図をみていただければ明白だがB側からの側面からも適合する様に作成すれば、その影響は、常識の範囲に収まる。
さらにその算定位置からは、計画建築物が存在する場合、同様に空を遮蔽する為に天空率が低くなる。天空図で確認していただくと明白だが天空図の左上の空地に対して、適合建築物を越えた計画建築物の面積の方が大きい。その部分は斜線規制をオーバーしているわけだから当然の結果といえる。
現状の手法では、敷地境界点間の垂直部に建築物を配置しなければ、天空率の影響から回避できる。敷地境界点間の角度が天空率を左右する不合理な結果となる。
次回はBとCの境界を検討してみたい。・・・・続く
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